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1.はじまりにあった存在 -1- [硝子の森]

 風が吹いた。
 灰色の砂塵を巻き上げて、乱立する廃虚の隙間を吹きぬける。

 ここは、「死んだ星」
 灰色の大地に占拠された、哀しい廃虚。
 僅かに生き残った人々が、ただ、がむしゃらに日々を送っている世界だ。

 その少女は、遥か昔に倒壊した塔の残骸。積み重なった瓦礫の上に立っていた。
 何も映してはいないような深い闇色の瞳で、ぼんやりとくすんだ色の空を遠く見上げている。
 砂塵を運ぶ風に揺れる、肩よりも少し長い髪も夜闇を切り取ったような漆黒。
 少女は、小さく唇を開きそっと息を吐き出した。

 かつては青だったと伝わる空が、その片鱗を見せることも今はもうない。
 伝えられる美しいモノは、全て消えてしまった。
 それを招いたのは、他ならぬこの星の住人で。彼らは永劫に過去の罪を贖い続けるのだ。
 選ぶ事すらも赦されずに。

 そんな事を考えて、彼女は微かに唇を震わせた。
 白い、陶磁器のような透明感のある肌に、その紅をさしたわけでもない紅い唇が不思議な印象を残す。
 少女の目線が、ふと下に向けられた。
 その先には、己の右手の指先に鼻をこすりつける動物がいる。
 銀色の体毛に被われた、獣--狼。彼女の腰の辺りに頭が来る体高の銀狼だ。
「リュヌ」
 鈴を震わせたような、そんな透明な声で。彼女はそう囁いた。
「時間は平等で残酷だよね」
 顔の表情を殆ど動かさないままに、そう言葉を紡ぐ。
 銀狼はただじっと己の蒼い瞳で、少女の瞳を見つめていた。

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